【2006年 トリノ】冬季オリンピック開催地決定の瞬間

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1999年6月19日、韓国・ソウルで開催された第109次IOC総会で、2006年冬季オリンピックの開催地がイタリアのトリノに決まりました。

開催地発表の瞬間

総会では、フアン・アントニオ・サマランチ会長が壇上に上がり、開催都市を発表しました。

“…the XXth Olympiad winter Olympic games in 2006 is Torino.”

この決定は、前年発覚した2002年ソルトレイクシティ大会招致をめぐる贈収賄スキャンダルとその余波に、大きな影響を受けていました。

「告発」で暗転したシオン

大本命だったシオン

2006年の招致レースは、トリノの他スイス・シオンが有力とされ、とりわけシオンは『絶対的本命』と見られていました。

まず、シオンはIOCはによる事前の技術評価で、トリノを上回る得点を叩き出していました。
さらに、すでに2回の招致失敗という苦い経験を経て、「三度目の正直」にかける地元住民の熱意も高く評価されていました。

比較項目シオン(スイス)トリノ(イタリア)
下馬評圧倒的大本命(技術評価1位)ダークホース
強み既存施設、完璧なインフラ都市再生ビジョン、アニェッリ家の支援
弱点ホドラー氏(告発者)の母国交通網や宿泊施設の未整備(当時)
招致の戦略「純粋なスポーツの祭典」「工業都市から文化都市への変革」
敗因・勝因不祥事後のIOC内の政治的反感政財界一体となった強力なロビー活動

「正義の告発」が「シオンへの反感」へ

にもかかわらずシオンが三度目の苦杯をなめた最も大きな理由は、あの「正義の告発」でした。

ソルトレイクシティ大会の招致の裏で行われたIOCの贈収賄の内部告発をしたのは、マルク・ホドラー氏。彼はスイスのIOC委員であり、シオン招致の精神的支柱でもありました。

告発によりIOCは選考方式を改革し、一般のIOC委員による候補地への個別視察が全面的に禁止されるなど、委員の特権を剥奪しました。これが一部のIOC委員の反感を呼び、それはホドラー氏が支えるシオンに向けられました。

「ソルトレイク・スキャンダル」を受けたオリンピック開催都市選考プロセスの変更点(Webの記事を材料にAIで作成)

トリノは「フィアット」と駆け抜ける

フィアットとアニェッリ家の威光に賭けたトリノ

シオンへの逆風を突き、イタリアのトリノは強力なバックアップ体制で対抗しました。

トリノは、イタリアを代表する自動車メーカー「フィアット」のお膝元です。そして、フィアットはアニェッリ家が経営権を握る同族経営の企業です。日本で言えばトヨタ自動車のような存在といえるかもしれません。

トリノ陣営では、フィアットの名誉会長ジャンニ・アニェッリ氏が陣頭指揮をとりました。世界の政財界に太い人脈をもつアニェッリ氏が、イタリア政財界を挙げた猛烈なロビー活動を展開したのでした。

さらに、トリノは「工業都市から文化・観光都市へ」変革するというビジョンを掲げました。この姿が、変化を求めていたIOC委員に強い印象を与えました。

ソルトレイク・スキャンダルが2006年冬季オリンピック開催地決定に与えた影響
ソルトレイク・スキャンダルが2006年冬季オリンピック開催地決定に与えた影響

「政治」が産んだ投票結果

そして、大本命のシオンが失速し、トリノが逆転勝利を収めます。

会場で狂喜乱舞しがイタリア代表団。とりわけジャンニ・アニェッリ氏は感極まり涙を流しました。

一方で、開催地として優れていたにもかかわらず三たび敗れたシオンは、呆然と立ち尽くすしかありませんでした。

この結果は、招致合戦が、純粋な競技環境や運営能力以上に、複雑な人間関係や組織の力学に左右されるという現実を改めて浮き彫りにしました。

最終投票の結果

選考委員会が絞り込んだ最終候補2都市による決選投票の結果、トリノが圧倒的な支持を得て勝利しました。

都市名得票数結果
トリノ (イタリア)53開催決定
シオン (スイス)36落選

ソルトレイクシティーの告発を受けたIOCの改革により、専門家で構成される「セレクションカレッジ」が、最終投票に進む都市を事前に絞り込む仕組みが採用されました。

これにより以下の都市が除外されました。ヘルシンキ(フィンランド)、クラーゲンフルト(オーストリア)、ポプラト・タトリ(スロバキア)、ザコパネ(ポーランド)

ミラノ・コルティナに引き継がれるレガシー

トリノは2006年、「都市の魅力とアルプスの自然を融合させる」という開催モデルを確立しました。

これは、一過性のものではなく、20年の時を経て、2026年のミラノ・コルティナ大会へと確かに継承され、進化を遂げています。

トリノからミラノへ~イタリア冬季五輪のレガシー継承と進化
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参考資料一覧
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