2026年、「スキーは滑って降りるもの」という常識が壊されます。
ミラノ・コルティナ五輪から、新種目「スキーマウンテニアリング(スキーモ)」が採用されます。
この競技は、滑る時間よりも、ゼーゼー言いながら雪山を駆け登る時間の方が長いという、今まで見たことがないシーンが繰り広げられます。
心拍数は常に限界、装備の着脱に大忙し。雪上の障害物競走とも、雪上のトライアスロンとも呼ばれる、新しい興奮に満ちた新競技の楽しみ方を解説します。
そもそも何をする競技? → レースは3段階
一言で言えば、「自分の足で雪山を登って、滑って降りて、早くゴールすれば勝ち」ですが、途中があまりに忙しい。選手はレース中に、以下の3つのモードを切り替えます。
- 登る(シール登行)
スキー板の裏に滑り止めを貼り、スキーを履いたまま、壁のような急斜面をよじ登る。 - 担ぐ(ハイクアップ)
斜面が急すぎてスキーでは登れない岩場などは、板を外してザックに背負い、ブーツで駆け上がる。その様子は忍者のよう。 - 滑る(滑降)
頂上で滑り止めを剥がし、一気に滑り降りる。
これを約3分〜4分という短時間で繰り返すスプリント種目がオリンピックで行われます。 1秒たりとも休む暇のない、息詰まる展開になります。
最大の見どころ「トランジション」=F1のピットイン
この競技の勝敗を分けるのは、体力だけではありません。モードを切り替えるトランジション(着脱作業)が最大の見どころです。
ここまで雪山を登ってきた選手たちは、頂上でスキーを履いたまま、板の裏に貼った滑り止めシートをバリッと一瞬で剥がしてウェアの胸元にねじ込み、滑走モードへ移行します。
この間ほんの数秒。早送りを見ているかのような手さばきです。
ここで、焦ってシートが絡まったり、ビンディング(留め具)をはめ損なうと、一瞬で数人に抜かれます。手元のわずかな狂いが命取りになる、緊迫のシーンです。
百聞は一見にしかず。この「忙しさ」を見てください
言葉で説明するよりも、映像を見るのが一番早いです。
1分18秒・2分45秒あたりがトランジションのシーンです。登りから降りへ切り替える華麗な手さばきに注目してください。もはやF1のタイヤ交換です。
「魔法のシート」の秘密
動画を見て、「なんでスキー板で坂を登れるの? 後ろに滑り落ちないの?」と思うでしょう。 秘密は、板の裏に貼るシールにあります。
かつてはアザラシの毛皮を使っていたためシール(Seal)と呼ばれていますが、現在はナイロンやモヘア製です。
表面には、猫の背中のような加工がされています。上から下へ撫でると滑らかですが、逆から撫でると毛が逆立って抵抗が生まれます。この原理で、前には進むけれど、後ろには滑り落ちないようになっているのです。
トランジションではこのシールを一瞬で剥がし、一気に滑り降ります。
なぜ今、五輪種目に?
IOCがこの地味に過酷な競技を選んだ理由は、大きく2つあります。
理由① 圧倒的に「映える」
今のオリンピックは、若い視聴者層を開拓しようとさまざまな試みをしています。
全身タイツのインパクト
空気抵抗と動きやすさを追求した結果、選手のウェアは全身ピチピチのスーツスタイルです。「戦隊ヒーロー」のような見た目で雪山を駆け回る姿は、インパクト抜群。
3分間の高速決着
スタートからゴールまで、勝負はたったの3分間。ショート動画に慣れ親しんだZ世代との相性が抜群によいのです。
理由② 実は「100年ぶりの復活」
実は、スキーモは全くの新種目ではありません。
1924年の第1回冬季五輪(シャモニー大会)で実施された、「ミリタリー・パトロール」という競技がスキーモのルーツです。 その後、この競技は2つに分かれました。
- バイアスロン
登りをやめ、平地での移動と射撃に特化したのがバイアスロンです。その後大人気種目になります。 - スキーモ
射撃をやめ、山岳地帯での登り降りに特化したのがスキーモです。
つまり、バイアスロンという弟に先を越された兄・スキーモが、102年ぶりに姿を変えて五輪に帰ってくるという、歴史的なカムバックでもあるのです。
ゴール後の「屍」まで見届ける
フィギュアスケートのような優雅さは、スキーモにはありません。ここにあるのは、酸素欠乏寸前の荒い息遣い、道具をガチャガチャ操作する音、そして雪煙です。
ゴールした瞬間、あまりの過酷さに選手たちは全員、雪の上に倒れ込み、しばらく動かなくなります。 その全力を出し切った屍の美しさも、スキーモの魅力です。
2026年、間違いなく「何あの競技?!」とSNSで話題になるはず。今のうちに予習しておけば、ドヤ顔で解説できること間違いなしです。
ミラノ・コルティナのスキーモはいつ?
スキーモの競技日程です。時間が変更される可能性がありますので、公式サイトの競技日程を必ずご確認ください。
- 2/19(木) 男子・女子スプリント
日本時間17:50に女子スプリント予選が始まります。
日本時間22:15に男子スプリント決勝が始まります。 - 2/21(土) 日本時間21:30から混合リレーが始まります。

スプリントはわずか半日で全競技が終了するスピーディーな展開です。
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